食品に在留する
農薬による人体影響

モンキーセンターで奇形の猿も出現

農業地帯に足を運ぶと、農薬を噴霧している光景に遭遇することがあります。野菜や果実が霧状になった農薬を大量にあびていきます。

海外では、バナナ農園で働く人々が雨のように大量の農薬をあびて、精子が生成できなくなり、大規模な裁判になったケースもあります。子孫が残せなくなったのです。

この事件は、『バナナの逆襲』というタイトルのドキュメンタリー映画になり、日本でも上映され、反響を呼びました。自分の子を持てないことを医者から宣告された男性たちの悲しみが描かれています。

わたしたちは、スーパーに並ぶ野菜や果物、お米などを選ぶとき、色やツヤ、新鮮さなどを見て購入しがちです。しかし、大半の野菜や果実には、農薬の化学物質が付着していることを、どれだけの人が意識しているでしょうか。農薬が付着した食品を食べることで、知らないうちに化学物質が体内に蓄積されているのです。

農作物に使われる農薬の多くには、ホルモンを攪乱する作用があるといわれています。ホルモンは身体全体の働きを維持・調節する大切な働きをしています。しかし、化学物質によって本来の働きを阻害されると、免疫力の低下を引き起こし、さまざまな健康障害を引き起こします。

農薬のリスクについて、『化学物質から身を守る方法』の著者で科学ジャーナリストの天笠啓祐さんは次のように指摘します。

「大きな問題のひとつは、生殖機能へのさまざまな影響です。男性の場合、精子数が大幅に減少したり、精巣がんなどの病気になったり、尿道下裂や停留精巣といった先天的な障害を引き起こすとされています。女性の場合は、乳がんや卵巣がん、子宮内膜症との関連が指摘されています」

淡路島で奇形の猿が出現

自然界の動物にも農薬による異変が起きています。瀬戸内海に浮かぶ淡路島。海の幸に恵まれているだけではなく、穏和な気候が豊富な農作物を育みます。この島に異変が起きているのです。天笠さんが続けます。

「農薬の恐ろしさを象徴する出来事に、淡路島のモンキーセンターで奇形の猿が多く生まれた実例があります。指が欠損していたり、手足がねじれたり、片方の腕に手が2つついていたり、なかには四肢がない猿もいました。その原因として考えられたのが、飼料の穀物や芋、果物などに残留していた殺虫剤や除草剤などの農薬です。実際、障害を持つ子猿を生んだ母猿の内臓にかなり高い濃度の農薬が検出されたそうです」

人間に対する影響については、
 「最近、環境省が行った3歳児の尿検査では、ほぼ全員から有機リン系やネオニコチノイド系の農薬が検出されました。近年、子どもたちに増えているアレルギーや発達障害などとも関係があるのではないかと疑われています」
 と、天笠さんは話します。

根から吸収される殺虫剤も

農作物の中には、いくら洗っても危険なものもあります。天笠さんが続けます。

「最近、問題になっているのがネオニコチノイド系の農薬です。これは根っこから吸収させる殺虫剤で、害虫が葉っぱなどを食べると死に至ります。したがって、水道水で洗っても殺虫剤は落ちません。当然、人間が食べれば、悪い影響が出る可能性があります。」

本来、危険な化学物質は、使用を全面禁止したり、規制するのが筋です。しかし、放置されているのが実態です。大規模な食品ビジネスに配慮した結果でしょう。

と、なれば消費者は自分で自分の身を守る以外に道はありません。自分が日常的にどのような化学物質を体内に取り込んでいるのかを把握しておくことが大切です。それによりリスクを軽減することができます。